アカヒレ 矛盾の中の魚

アカヒレ
Tanichthys albonubes

今はあまり見ないけれど,ゲームセンターで,カプセルの中に魚が入っているゲーム機がありました。機械のアームで挟まれて運ばれる魚。現代版金魚すくい。その中にいるのが,この魚,アカヒレです。

熱帯魚屋さんの一角で,「生餌」と呼ばれ,大型魚の餌として売られている魚がいます。生餌にはいくつか種類があって,「コアカ」と呼ばれる金魚,ヒメダカ,そしてこのアカヒレです。水槽の中にぎゅうぎゅうに詰め込まれたアカヒレたち。購入された直後に喰われて死んでいくアカヒレたち。

「コッピ―」とも呼ばれ,「コップでも買える魚」として売られることのある魚。ヒーター無し,ろ過装置無しの小さなコップ容器で飼育されることもあります。それが「悪いことだ」とは思いません。

ずいぶん人間にぞんざいに扱われている魚,アカヒレ。
けれど,もともとの生息地であった中国では,開発によってほぼ絶滅状態にあります。

アクアリウムの世界では,アカヒレは「とても飼いやすい」とされています。事実,とても飼いやすくて,水質の悪化にも強く,低水温にも耐え(熱帯魚というよりは温帯魚なので),病気にもなりにくいです。
環境破壊のインパクトはとてつもなくて,河川の埋め立て,重金属の流出,下水の流出等々,どれだけ丈夫な生物であっても,野生種を絶滅させるまでに追いやる。

アカヒレは昔から観賞魚として「利用」されていて,いろいろなところで養殖がなされてきました。なので,たとえ野生種が滅びたとしても,「種」としては保存されている。善とか悪とかは置いておいて,こういう話を知ると,人間が生物に及ぼす影響って大き過ぎて,なんだか歪んでいるなと思います。

野生でも,人工飼育下でもぞんざいに扱われているけれど,とても綺麗な魚で,水槽になじんだアカヒレがヒレを思いきり伸ばした姿は,息をのむほど美しい。
「アカヒレ」とはよくいったもので,真っ赤に染まって少し黒みを帯びたヒレ,白いワンポイントのあるヒレは,目を見張るものがあります。

中国で,野生で生き残っているアカヒレの発見例もあって,どうかそのアカヒレたちが自然環境下で生き延び,子孫を残していくことを望むのだけれど,これもアカヒレを水槽内で飼育している人間の勝手なエゴ。

種類アカヒレ (ベトナム・アカヒレとは別種)
生息地中国
体長4cmくらい
飼育難易度★☆☆☆☆☆ とても丈夫
繁殖難易度★★☆☆☆☆ 水草を茂らせれば繁殖は容易
人工飼料
飼育目安45cm水槽に10匹 60cm水槽に20匹くらい
かかりやすい病気白点病


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