チョコレートグラミー 飼育難易度は苦め

チョコレートグラミー Sphaerichthys osphromenoides

チョコレートの語源は,アステカ民族の言語の「苦い水」という言葉からくるようです(諸説あり)。もとは薬として服用されていたようで,歴史の中で苦い飲み物(薬)→甘い飲み物(嗜好品)→固形の菓子へと変化していったらしい。

チョコレートグラミーは,飲むと苦そうな「ブラックウォーター」と言われるpH5.0前後の茶褐色に色づいた水の中に生息しています。ブラックウォーターには朽木や枯葉から溶け出した様々な成分が含まれていて,抗菌作用があるとされています。
チョコレートグラミーの飼育はやや難しいのですが,その難しさは,こういったブラックウォーターに生息していることに起因します。
まず,輸入直後や店頭に並ぶときには,現地の水からの変化に耐えられず,かなり弱っていることが多いです(良心的な熱帯魚ショップではある程度コンディションを整えてから売られていますが)。購入後に自宅の水槽に入れたときには,またしても水質の変化によるダメージを受けて弱っていく。度重なるダメージの蓄積により,飼育環境下で長生きすることができず短命に終わってしまうのです。
また,ブラックウォーターには抗菌作用があるのですが,そのような水に生息しているということは,魚自身に免疫力がついていない(菌への免疫を水に依存している)ということも考えられます。水槽内には常に様々な病原菌が存在しているので,それらの病原菌に体が蝕まれ,死んでしまいます。

「じゃあブラックウォーターで飼育すればいいじゃん。」という話になってくるのですが,ブラックウォーターの管理もそれほど簡単なものではありません。ブラックウォーターの抗菌作用は,水槽内の水を浄化するバクテリアにも作用します。バクテリアの活性が鈍ると,餌の食べ残しや生体の排泄物がうまく分解されず,水の汚れが早くなります。それには水替えで対処すればよいのですが,ブラックウォーターは酸性の軟水なので,水道水をそのまま水槽に入れてしまうと一時的に水質が大きく変わってしまうことになります。大きな水質の変化は,チョコレートグラミーにとってダメージです。
常に替えのブラックウォーターを用意しておくか,多い頻度で少しずつ水替えを行う必要があるのです。なかなか難しい…。

チョコレートグラミーは,大きな目とゆっくりした動きがとても愛らしい魚なのですが,飼育するにあたってはその性質をしっかりと把握してからでないと,あまり幸せな未来は待っていません。バレンタインデーに熱帯魚屋さんのセールで見かけて衝動買いしてしまいたくなりますが,少し慎重になった方がよさそうです。
動きや小さな体に惚れたなら,同じ仲間で飼育が容易なゴールデンハニードワーフグラミーをお勧めします。
おちょぼ口やおしとやかな体色にどうしても惹かれたのなら…あきらめて,丁寧に飼育してみましょう。

種類チョコレートグラミー
生息地マレーシア
体長5cmくらい
飼育難易度★★★★★☆ やや難しい。
繁殖難易度★★★ ★★☆  可能ではあるが困難
ブラインシュリンプ,人工飼料(細かめ)
飼育目安45cm水槽に3匹,60cm水槽に5匹くらい
かかりやすい病気水質の変化・悪化による衰弱

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