THE FISH 魚と出会う図鑑

何気なく見ていたあの魚が、
一瞬で特別な生き物になる。
長嶋祐成著 河出書房新社


なんてエネルギーのこもった本なのだろう。
絵にも,文章にも,筆者の,魚への,海への,自然への想いが凝縮されています。
読んでいるうちに海辺に誘われて,いつの間にか海の中へどっぷりと浸かっている感覚になる。

アクアリウムが好きな人は,たぶん,「魚が愛らしいから」ということと同じくらい,「自分の生活と遠い自然を結び付けたいから」という理由で熱帯魚を飼育しているように思います。
長嶋さんの絵を見て,その文章を読んでいると,不思議とその魚が泳ぐ自然に,自分が結びつく。アクアリウムを楽しんでいるときの喜びにとても近いものを感じて,幸せな気持ちになりました。

マハゼの光沢,マサバの青み,カスミアジの赤み,アオリイカの表情…ひとつひとつの絵に命が吹き込まれていて,ありったけの愛情を感じます。色のひとつひとつが愛おしい。

表紙のイワシも,ただのイワシの群れではありません。表現の勝利。
誌面を見て,読んで,涙が出ました。
イワシで泣く日が来るとは思わなかった。

少しでも魚が好きな人に,ぜひとも手にとってほしい一冊です。

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